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おんなはおなじものがたり
女は同じ物語
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《女は同じ物語(おんなはおなじものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,279 字 · 44 頁
――紀伊、どうしたんだ。と広一郎は心のなかで叫んだ。どうしたんだ、もうすぐ最後のぎりぎりだぞ。
そして、その「最後のぎりぎり」のときが来た。花嫁が立っていってから、約半刻、仲人の海野図書がおひらきの辞を述べ、広一郎は席を立って寝間へ導かれた。晴れの寝衣に着替えながら、「紀伊、――」と彼は心のなかで呼びかけた。海野夫人は彼を新婚の閨へ案内し、彼を屏風の内へ入れてから、そっと襖を閉めて去った。
花嫁は夜具の上に坐っていた。
六曲の金屏風に、絹行燈の光りがうつっていた。華やかな嬌めかしい夜具の上で、雪白の寝衣に鴾色の扱帯をしめ、頭をふかく垂れて、花嫁は坐っていた。――広一郎は決心した、すべてを花嫁にうちあけよう。つなは気は強いしいじわるな娘だった。しかし、うちあけて話せばわかってくれるだろう、彼はそう思って、そこへ坐った。
すると初めて、静かに花嫁が顔をあげた。
「あ、――」と広一郎は云った、「おまえ」
花嫁は両手をついた。
「どうぞ堪忍して下さいまし」と花嫁が云った、「わたくしがどのように変ったか、みて頂きたかったのです」
広一郎は「まさか」と呟き、茫然と眼をみはった。