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じょよう
女妖
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《女妖(じょよう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,691 字 · 20 頁
三
生涯に一度の聖なる饗宴には、ゆっくり心の準備をしておかなければならない。それには、一日の余裕が望ましくさえあった。しかし、
「男の友達でしょう」
「まあ、やけるのね。うれしい。でも、そうじゃないの。女よ。女のうちではいっとう好きな人。その人の身の上に関係のある急ぎの用件なの。のばすわけには行かない」
女のビロードの腕が、彼の首にまきついた。唇がじかにさわった。温かい、濡れた、薫りの高い花弁が、グングンおしつけて来て、息もできなかった。からだじゅうがしびれて、気が遠くなりそうだった。
「九時キッカリよ。わけがあるの。忘れないで」
ドアの外まで見送って、彼女はそれを、彼の耳のそばに、くりかえしささやいた。
三
その晩、浩一は靖国神社のそばの小さなホテルに泊ったが、一と晩じゅうまんじりともせず、泣きあかした。涙があとからあとから、とめどもなく溢れ出して来て、どうすることも出来なかった。熱病のように、からだがふるえていた。翌朝になって少し眠ったけれど、熟睡はしなかった。午後は湯にはいったり、床屋へ行ったり、肌着やワイシャツを更えたりして、ソワソワとすごした。まだ明るいうちから、あのアパートの前へ、行って見たくなるのを、じっとこらえて、約束の時間が来るのを待った。