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おんなごころのつよければ

女心の強ければ

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《女心の強ければ(おんなごころのつよければ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 47,011 字 · 94 頁

青空文庫

音もなく、千代乃が立ち現われて、室の入口に片膝をついていた。

「ひどい雷ですこと。二階はあぶないから、下へいらっしゃいません?」

落雷の危険があるとすれば、二階も階下も同じことだろうし、彼女自身、少しも危ながってはいない様子だ。長谷川がむっくり身を起すと、彼女はもう先に立って降りていった。

茶の間の長火鉢のそばには、本館から届いたらしい料理が食卓に並んでおり、銚子まで添えてあった。

「今晩も召し上りますでしょう。」

電気が来ないから、電熱器は使えないというので、長火鉢に炭火をとって、その銅壺で酒の燗をするのである。それでも、山の中の雷雨の夕は暑くはなかった。

「昨晩は、いい御機嫌でしたわ。」

騒々しい本館からこちらへ移ってきて、気分の調和がとれず、町に出て酒を飲んできたのだった。毎日晩酌をするわけではなかったが、酒は好きだった。

「お酒まで用意して頂いて、恐縮ですね。あなたも、あがるんでしょう。」

「そうね、少し頂こうかしら。」

独りごとのように呟いて、彼女は茶箪笥から自分の猪口を取り出し、台所から料理の皿を持ち出してきた。

茶の間といっても、床の間つきの六畳。