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おんなごころのつよければ

女心の強ければ

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《女心の強ければ(おんなごころのつよければ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 47,011 字 · 94 頁

青空文庫

その床の間には、南画風の山水の軸物に、青磁の香炉、片わきに琴が立てかけてある。長火鉢はきれいに拭きこんであり、彼女は、少し古風なと思われる髪形に、生え際凉しく高めに結いあげ、柳と燕を大きく散らした藍色の着物に、博多の一重帯をしめている。細おもての頬の肉附きが薄く、眼には強い視力がこもっていて、理智的な光りがある。細い指先で、器用にお酌をしてくれる。

「どうも……自分でやりますよ。」

長谷川はなんだか、気持ちがしっくりしなかった。

雷はまだやまず、蒼白い閃光が、薄暗い室にぱっぱっと差し込んできた。それが却って酒の肴になり、長谷川は手酌であおり、こんどは、千代乃の方にもお酌をしてやった。

「こちらに、女中さんはいないんですか。」

「一人いますけれど、あちらの方が忙しい時は、手伝いに、やりっきりにしておりますの。」

「しかし、こちらだって、別館でしょう。」

「そうなんですが……表札を御覧になりまして?」

表札には、松月別館とはしてなく、ただ三浦千代乃とだけあるのだった。

「あ、あなたの家ですか。」

「そういうことになっておりますが、実は、柿沼のものなんです。」

「柿沼……。