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ふじんのてんしょく

婦人の天職

堺 利彦

線上閱讀堺 利彦《婦人の天職(ふじんのてんしょく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,897 字 · 10 頁

青空文庫

しかるに天下かつてこの事なきを見れば、この料理天職説も畢竟は男子の得手勝手より婦人に塗りつけたるものにして、婦人は男子の意を迎えんがため、もしくは知らず知らず男子の意を受けて、ついに自らしか言うに至りたるものなるべし。

小生のさらに考うるところによれば、仮に水をくむことが婦人の天職なりとしたところで、水道の給水法が完成せられて、どこの家においてもネジを一つひねればこんこんとして水があふれ出るという場合になれば、婦人の天職はほとんど無くなってしまうにあらずや。また仮に飯をたくことが婦人の天職としたところで、おいおい飯炊法が改良せられて、各戸別々にかまどを据えつくるは不経済のはなはだしきものということになり、一〇〇軒も二〇〇軒もが一緒になり、もしくは一町内、一村落が申し合わせて、大仕掛けの共同飯炊所を作るの日ありとすれば、数百人の細君が数人ずつかわるがわる飯炊当番になるとしても、わずかに一〇〇日に一度だけしかその天職を尽くしえざることとなるにあらずや。さりとてはあまりに軽少なる婦人の天職というべし。されば炊事といい、裁縫というがごとき、その大部分はむしろ器械の天職にして、決して人間の天職にあらず。