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こどものじぶんのはなし

子供の時分の話

小川 未明

線上閱讀小川 未明《子供の時分の話(こどものじぶんのはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 5,307 字 · 11 頁

青空文庫

狭い、身動きもできないような真っ暗の箱の中に押しこめられて、私はしかたなくじっとしていました。おじいさんは、どこを通っているのだかわかりませんでした。その後はチャルメラも吹かずに、さっさと歩いていました。

「あんまり、一人で遠くへゆくと、人さらいに連れられていってしまう。」といった、祖母や母親の言葉が思い出されて、私は、しみじみ悲しくなって泣いていました。

おじいさんは、どこをどう歩いているのだか私にはわかりませんでした。だいぶん長い間歩いたと思う時分に、おじいさんは屋台を下ろしました。そして、箱の中から私を外に出しました。このときよく見ると、おじいさんの顔は、まったく気味が悪いほど色が白く、目が光っていました。私はいつも村にやってくる無愛想な、あめ売りじいさんを思い出して、どれほど、その人のほうがいいかしれないと思いました。

「さあ、なんにも怖いことはない。私といっしょにくるのだ。」と、おじいさんは、屋台を木の下に置いたまま先に立って歩きました。私は、そこがどこだか、ちっともわかりませんでした。さびしい山の間で、両方には松の木や、いろいろな雑木のしげった山が重なり合っていました。