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あんごのしんにほんちり

安吾の新日本地理

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《安吾の新日本地理(あんごのしんにほんちり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,973 字 · 32 頁

青空文庫

「□□□天皇御世乙巳年六月十日」

と書きだしているね。書紀によれば、これは皇極四年である。皇極四年ならば、法王帝説は、先の条にある如く「飛鳥天皇御世乙巳年」と書く筈だね。ところが、飛鳥天皇は二字だが、□□□天皇は三字だよ。そして、それにつづいて、その六月十一日に、

「近江天皇、殺於林太郎□□、以明日、其父豊浦大臣子孫等皆滅之」とある。

近江天皇はまだその時は中大兄王で天皇ではないが、後に天皇たるべき人をはじめから天皇とよんでいる例はこの本ではしょッちゅうのことだ。怪しむに足らん。まだ天皇になる前にも後の天皇を天皇とよぶのがこの本の例であるのを知ると、「入鹿臣□□林太郎」も「林太郎□□」も、どっちも、やっぱり天皇か皇太子、もしくは天皇か皇太子を特に蘇我流にした同じ意味の別の語であったかも知れないね。

皇極二年に山背大兄王及び十五王子を殺すとともに、蝦夷か入鹿のどちらかがハッキリ天皇位につき、民衆もそれを認めていたのではないかね。即ち、

「□□□天皇御世乙巳年」は皇極天皇の飛鳥ではなく、甘梼岡だか林太郎だか他の何物だか知らないが、蝦夷天皇か入鹿天皇を示すどれかの三字があったのだ。