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ほうせきしょう

宝石商

小川 未明

線上閱讀小川 未明《宝石商(ほうせきしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 5,265 字 · 11 頁

青空文庫

そして、だんだんさびしくなるばかりでした。雪はだんだん地の上に積もって、どこを見ても、ただ真っ白なばかりであります。小川も、田も、畑も雪の下にうずもれてしまって、どこが路やら、それすら見当がつかなくなってしまったのであります。

そのうちに、日が暮れかかってきました。からすが遠いどこかの森の中で、悲しい声をたててないていました。

男は、早く町に着いて、湯に入って暖まろうなどと空想をしていたのでありますが、いまは、それどころでなく、まったく心細くなってしまいました。この分でいたら、すぐ四辺が真っ暗になるだろう。そして、そのうちに手足は凍えて、腹は空いて、自分は、このだれも人の通らない荒野の中で倒れて死んでしまわなければならぬだろうと考えました。

ちょうど、そのときであります。真っ黒な雲を破って、青くさえた月がちょっと顔を出しました。そして、月はいいました。

「おまえがこの北の国の宝をみんな南に持っていってしまう、その罰だ。海も、山も、その宝がほかの遠い国へゆくのを悲しんでいるのだ。」と、月がすきとおる寒い声でいったのです。

宝石商はびっくりして、空を仰ぎますと、すでに月は真っ黒な雲の中にその顔を隠してしまいました。