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いえ
家
島崎 藤村
線上閱讀島崎 藤村《家(いえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,748 字 · 254 頁
この長い行商の旅は、ずっと以前から仕来ったことで、橋本の薬といえば三吉が住む町のあたりまで弘まっていた。燈火の点く頃から、お雪も嘉助の話を聞こうとして、子供を抱きながら夫の傍へ来た。
「女のお児さんかなし。子供衆の持薬には極く好いで、すこし置いていかず」
こう嘉助が言って、土産がわりに橋本の薬を取出した。
「貴方のところでもお嫁さんがいらしったそうで……」とお雪は正太の細君のことを言った。「豊世さんでしたね」と三吉も引取て、「吾家へも手紙を貰いましたが、なかなか達者に好く書いてありましたッけ」
「ええ、まあ、御蔭様で好いお嫁さんを見つけました。あれ位のお嫁さんは探したってそう沢山無い積りだ。大旦那始め皆な大悦びよなし……」
と言って、嘉助は禿頭を撫でた。正太が結婚について、いかに壮んな式を挙げたかということは、この番頭の話で略想像された。
「嘉助さんが褒める位だから、余程好いお嫁さんに相違ないぜ」
「正太さんも御仕合ですこと」
こんな言葉を、三吉夫婦は番頭の聞いていないところで交換した。
翌朝早く嘉助は別離を告げて発った。その朝露を踏んで出て行く甲斐々々しい後姿は、余計に寂しい思を三吉の胸に残した。