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よせとしばいと

寄席と芝居と

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《寄席と芝居と(よせとしばいと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 26,084 字 · 52 頁

青空文庫

名人同士はこういうものかと、私は今更のように発明した。秀調は先代で、女形としては容貌も悪く、調子も悪かったが、こういう役は不思議に巧かった。

春木座の時にもこの狂言にちなんだ牡丹燈籠をかけたが、それは劇場の近傍と木戸前だけにとどまっていた。歌舞伎座の時には其の時代にめずらしい大宣伝を試みて、劇場附近は勿論、東京市中の各氷屋に燈籠をかけさせた。牡丹の造花を添えた鼠色の大きい盆燈籠で、その垂れに歌舞伎座、牡丹燈籠などと記してあった。盆興行であるので、十五と十六の両日は藪入りの観客に牡丹燈籠を画いた団扇を配った。同月二十三日の川開きには、牡丹燈籠二千個を大川に流した。こうした宣伝が効を奏して、この興行は大好評の大入りを占め、芝居を観ると観ざるとを問わず、東京市中に牡丹燈籠の名が喧伝された。今日ではどんなに大入りの芝居があっても、これ程の大評判にはなり得ない。

その原因をかんがえるに、第一は社会がその当時よりも多忙で複雑になった為であろう。第二は東京が広くなった為であろう。第三は各劇場の興行回数が多くなった為であろう。この「牡丹燈籠」を上演した明治二十五年の歌舞伎座は、一月、三月、五月、七月、九月、十月の六回興行に過ぎなかった。