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よせとしばいと

寄席と芝居と

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《寄席と芝居と(よせとしばいと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 26,084 字 · 52 頁

青空文庫

それについて思われるのは、円朝は人物の名を付けることが巧いことである。又旅のお角などは先ず普通であるが、その子が胡麻の灰で道連れ小平、その同類が継立の仁助などは、いずれも好く出来ている。落語でも芝居でも、人名などは一種の符牒に過ぎないように思われるが、決してそうで無い。道連れの小平などという名を聞けば、いかにもそれが道中の胡麻の灰で、忌な眼を光らせて往来の旅人を窺っているらしく連想される。こういう点にも、円朝は相当の苦心を払っていたらしい。

たとい越後善吉があるにしても、斎藤内蔵之助があるにしても、それだけの粉本では十五席の長い人情話は出来あがらない。一席ごとに皆それぞれの山を作って、昨晩の聴衆を今晩へ、今晩の聴衆を明晩へと引き摺って行かなければならない。その点は新聞の続き物と同様であるが、新聞は忌でも応でも毎日配達されて毎日読まされる。寄席の聴衆は自宅から毎晩わざわざ通って来るのであるから、よほど面白くないと毎晩つづけて来ることは無い。そこに多大の苦心が潜んでいるわけである。円朝をして今の世に在らしめば、その創意、その文才、いわゆる大衆作家としても相当の地位を占め得たと思う。