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よせとしばいと
寄席と芝居と
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《寄席と芝居と(よせとしばいと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 26,084 字 · 52 頁
堂摺連には学生が多かったから、今日は社会的に相当の地位を占めている実業家や政治家や学者のうちにも、かつてドウスルに憂き身をやつした経歴の所有者を少なからず見いだすであろう。
娘義太夫全盛の証拠には、その当時の諸新聞は、二、三の大新聞を除いて大抵は「今晩の語り物」という一欄を設けて、各寄席毎晩の浄瑠璃外題と太夫の名を掲載していたのであった。日露戦争前後から堂摺連も次第におとろえ、娘義太夫もまた衰えた。
日清戦争以後からは浪花節が流行して来た。その以前の浪花節は専ら場末の寄席に逼塞して、聴衆も下層の人々が多かったのであるが、次第に勢力を増して来て、市内で相当の地位を占めている席亭も「御座敷浄瑠璃、浪花節」のビラを懸けるようになった。聴衆もまた高まって、相当の商人も行き、髭の生えた旦那も行き、黒縮緬の羽織を着た奥さんも行くようになった。そのほかに、明治三十年以後には源氏節、大阪仁和賀、改良剣舞のたぐいまでが東京の寄席にあらわれて、在来の色物はだんだんに圧迫されて来た。今日落語界の不振を説く人があるが、右の事情で東京の落語界はその当時から已に凋落の経路を辿りつつあったのである。