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ずいひつ よせばやし
寄席囃子 正岡容寄席随筆集
正岡 容
線上閱讀正岡 容《寄席囃子 正岡容寄席随筆集(ずいひつ よせばやし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 112,259 字 · 222 頁
ほんとうにここはまた、山の手らしい、いつも薄青い瓦斯灯の灯の世界であった。めくらで、あしの立たなかった、あの小せんを最後に聴いたのが、この若竹の秋の夜だった。
小せんは、通り庭になっている秋草の植えこんであるあたりを、きっと俥から下りると、前座に負われて楽屋入りした。――それが寄席からうかがわれるので、いっそ、我らに涙だった。
小せんの上がる前というと御簾が下りる。蒲団へ座った小せんの四隅を、前座がもって高座に上げる。――やがて、音もなく、御簾が上がる。――小せんは、さびしい面輪をふせて、身を、釈台に凭らせている……。
バタバタと鳴る拍手――その拍手さえ小せんにおくるお客たちのは妙にさびしく遠慮がちだったのを、あたしは、忘れることができない。その晩小せんは「近江八景」という、惚れた遊女が果たして自分のところへくるか否か、易者にみてもらう、あの噺をやったけれど、
「おめえの顔なんざ、梅雨どきの共同便所へはだしで入って、アルボース石鹸で洗ったような顔だ」
云々という独自のクスグリを、ずいぶん身にしみて、聞いた記憶がある。
小せんは、あれからじき患いこんで、翌る四月の末に死んだが、最後を秋の夜に聴いたゆえか、自分は小せんの死というと、あの若竹の秋の夜が、あの若竹の打ち水濡れし前栽が、目に泛ぶ、さらに山の手の寄席