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さむさ

寒さ

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《寒さ(さむさ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,972 字 · 8 頁

青空文庫

が、突然ふり返ると、さもがっかりしたように白墨の欠を抛り出した。

「どうも素人の堀川君を相手じゃ、せっかくの発見の自慢も出来ない。――とにかく長谷川君の許嫁なる人は公式通りにのぼせ出したようだ。」

「実際そう云う公式がありゃ、世の中はよっぽど楽になるんだが。」

保吉は長ながと足をのばし、ぼんやり窓の外の雪景色を眺めた。この物理の教官室は二階の隅に当っているため、体操器械のあるグラウンドや、グラウンドの向うの並松や、そのまた向うの赤煉瓦の建物を一目に見渡すのも容易だった。海も――海は建物と建物との間に薄暗い波を煙らせていた。

「その代りに文学者は上ったりだぜ。――どうだい、この間出した本の売れ口は?」

「不相変ちっとも売れないね。作者と読者との間には伝熱作用も起らないようだ。――時に長谷川君の結婚はまだなんですか?」

「ええ、もう一月ばかりになっているんですが、――その用もいろいろあるものですから、勉強の出来ないのに弱っています。」

「勉強も出来ないほど待ち遠しいかね。」

「宮本さんじゃあるまいし、第一家を持つとしても、借家のないのに弱っているんです。現にこの前の日曜などにはあらかた市中を歩いて見ました。