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かんざくらのはなし

寒桜の話

牧野 富太郎

線上閱讀牧野 富太郎《寒桜の話(かんざくらのはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,728 字 · 8 頁

青空文庫

しかしどうも活着がむつかしくて、やっと二本だけ成功させたので、これを公園へ出す前にまずそれを母樹の傍へ植えさせた。

幸いにこの二本の幼樹がその後勢いよく生長しつつあったが、今日はそれがどうなっているのかと、ときどきこれを思い出すのである。元来当時自分の意見で上のように実行したものであるから、おりに触れてこれを回想するたびに右のカンザクラの親木と児の木とについて心もとなく思っているので、この博物館のカンザクラについて上に述べたような事実があったということをここに書いておくのもせめてもの心やりである。右のことがらはおそらく今日の博物館のお方もご存じないことであろうと想像するから、今ここにそのありし当時のいきさつを書き残しおくこともあながち無益ではなかろうと信ずる。

私は上のごとく博物館に勤めていた当時は、人々を引きつけるに足る珍しい桜を上野公園に栽えて公園を飾り、衆目をたのしますことにつき不断の関心を持っていて、それを実行に移しかけたこともあったのである。

すなわち前のカンザクラもそうであったが、次に日本の東北地方の山に多きオオヤマザクラの苗木百本を、自費で北海道から取り寄せてこれを博物館に献納し、同館内の地へ栽えて生長させたこともあった。