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かんえいぶどうかがみ

寛永武道鑑

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《寛永武道鑑(かんえいぶどうかがみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,633 字 · 26 頁

青空文庫

半兵衛が振向くと

「寒うてならんから、一枚重ねる」

と、声をかけて、馬を停めた。半兵衛は、頷いたが

(油断をしてはいけないのに)

と、思った。寒い朝であったから、誰も厚着をしていた。その上へ又重ねては、いざという時に働けまい、と思ったが、然し、荒木の一行が、昨日から見えなかったから、半兵衛も

(寒いのに、耐えきれまい。河合も、もう四十すぎだから――)

と、思って、正面の上野の町やら、来た方の山、田を、見廻していた。

(武芸も四十を越すと、少し下り坂になるかな。寒さが、あれだけ身にこたえるだけ、若い時よりも衰えたのか――いいや、修業一つだろう。六十になっても、袷一枚でいる人さえあるから)

半兵衛は、甚左衛門が相当の腕の人だとは思っていたが、その頭、その肚に於て、荒木の方が、優れていると、判断していた。そして

(わしはわし一人で戦うのだ。誰もあてにはしないぞ)

と、思うと、甚左の重ね着に、批評を加えたのも、いけないように思えた。

(他人が、何をしようが、わしは、わし一人だ)

そう思って、馬をそろそろ歩かせかけると

「お待たせ申した」

と、甚左が、叫んだ。そして、

「齢をとると、寒さだけには、耐えきれん」