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どんぐり

寺田寅彦随筆集 第一巻

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第一巻(どんぐり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 頁

青空文庫

猫というものがきわめてわずかであるが人格化されて私の心に映り始めたようである。

それ以来この猫の母子はいっそう人の影を恐れるようになった。それに比例して子供らの興味も増して行った。夕食のあとなどには庭のあちらこちらに伏兵のようにかくれていて、うっかり出て来る子猫を追い回してつかまえようとしていたが、もうおとなにでもつかまりそうでなかった。あまりに募る迫害に恐れたのか、それともまた子猫がもう一人前になったのか、縁の下の産所も永久に見捨ててどこかへ移って行った。それでも時々隣の離れの庇の上に母子の姿を見かける事はあった。子猫は見るたびごとに大きくなっているようであった。そしてもう立派なひとかどのどろぼう猫らしい用心深さと敏捷さを示していた。

ねずみのいたずらはその間にも続いていた。とうとう二階の押し入れの襖を食い破って、来客用に備えてあるいちばんいい夜具に大きな穴をあけているのを発見したりした。もう子ねずみさえもかからなくなってしまった捕鼠器は、ふたの落ちたまま台所の戸棚の上にほうり上げられて、鈎につるした薩摩揚げは干からびたせんべいのようにそりかえっていた。