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どんぐり

寺田寅彦随筆集 第一巻

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第一巻(どんぐり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 頁

青空文庫

次に物体の重量の感覚でも同様で、十匁のものと十一匁のものとの差はなかなかわかるものではない。

このように外界の存在を認めその現象を直接に感ずるのは吾人の感官によるほかはないのにその感官がすこぶる粗雑なものであってしかも人々個々に一致せぬものである。それで各人が自分の感覚のみをたよって互いに矛盾した事を主張し合っている間は普遍的すなわちだれにも通用のできる事実は成り立たぬ、すなわち科学は成り立ち得ぬのである。

それで物質界に関する普遍的な知識を成立させるには第一に吾人の直接の感覚すなわち主観的の標準をいったん放棄して自分以外の物質界自身に標準を移す必要がある。これが現代物理的科学にみなぎりわたっている非人間的自然観の根元である。

このように外界を標準として外界を判断する事は何も物理学者をまたない、だれでも日常知らず知らずに行なっている事である。ある生まれつき盲目の人が生長後手術を受けて眼瞼を切開し、始めて浮き世の光を見た時に、眼界にある物象はすべて自分の目の表面に糊着したものとしか思えなかったそうである。こういう無経験な純粋な感覚のみにたよれば一間前にある一尺の棒と十間の距離にある同様な棒とは全く別物としか見えないに相違ない。