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からすうりのはなとが

寺田寅彦随筆集 第三巻

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第三巻(からすうりのはなとが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 頁

青空文庫

(野)は複雑なようで弱い。「ひたといい出すお袋の事」と上がれば「よもすがら尼の持病を押えける」と下がるのである。……こういうふうに全編を通じて見て行っても芭蕉と野坡の「音色」の著しいちがいはどこまでも截然と読者の心耳に響いて明瞭に聞き分けられるであろう。同じように、たとえば「炭俵」秋の部の其角孤屋のデュエットを見ると、なんとなく金属管楽器と木管楽器の対立という感じがある。前者の「秋の空尾の上の杉に離れたり」「息吹きかえす霍乱の針」「顔に物着てうたたねの月」「いさ心跡なき金のつかい道」等にはなんらか晴れやかに明るいホルンか何かの調子があるに対して「つたい道には丸太ころばす」「足軽の子守している八つ下がり」その他には少なくも調子の上でどことなく重く濁ったオボーか何かの音色がこもっている。最後にもう一つ「猿蓑」で芭蕉去来凡兆の三重奏を取ってみる。これでも芭蕉のは活殺自由のヴァイオリンの感じがあり、凡兆は中音域を往来するセロ、去来にはどこか理知的常識的なピアノの趣がなくはない。

しかしこういう見立てのようなことはもちろん見る人によっていろいろちがいうるものであり、なんら絶対普遍的価値のないものである。