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からすうりのはなとが

寺田寅彦随筆集 第三巻

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第三巻(からすうりのはなとが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 頁

青空文庫

もしこれをそのままに放任して行けば末はどこまで行くかわからない。しかし私は途中でこのあてなしの逍遙を切り上げもう一ぺん元の所へ立ち帰り「前句」の場面に立ちもどってしかとこれを見直してみる。すると前には見えなかった別の扉のようなものがすうと開いて、それをはいって行くと前とはまたまるでちがった風物の花園が眼前に広がって行くのである。そういうことを繰り返していると単なる前句の十七字には無数の扉があり窓があって、それがみなそれぞれの世界への入り口であることに気づくのである。

しかしこういう漫歩的見物をしているだけでは所要の付け句はできない。付け句を構成するためにはそれ以前に考慮さるべき若干の制約が規定されている。第一は季題に関するもので、たとえば「秋」あるいは「雑」でなければならないとすれば、前記の逍遙中に出会ったものはこれによって第一段の整理を受ける。次には前々句との関係による制約であって、前々句が海に関したものとかまた座敷に関したものであれば、それと同種のものは捨ててしまわなければならない。そこで材料は第二段の淘汰を受けることになる。次には前々句よりももっと前の句列いったいへの考慮であって、そこにはたとえば人事の葛藤があまり多く連続しておりはしないか、あまりに多くの客観的風物がもたれ込んでおりはしないかを考え