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からすうりのはなとが

寺田寅彦随筆集 第三巻

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第三巻(からすうりのはなとが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 頁

青空文庫

それで自分のここに書いたこの取り止めもない追憶が、さもさも自分だけで先生を独占していたかのように読者に見えるとすれば、それはおそらく他の多くの門下生の各自の偽らぬ心持ちを代表するものとして了解しゆるしてもらわれるべきだと思う。そういう同門下の人たちと先生没後の今日、時おり何かの機会で顔を合わせるごとに感じる名状し難いなつかしさの奥には、千駄木や早稲田の先生の家における、昔の愉快な集会の記憶が背景となって隠れているであろう。

記憶の悪い自分のこの追憶の記録には、おそらく時代の錯誤や、事実の思い違いがいろいろあるであろうと思う。ただ自分の主観の世界における先生のおもかげを、自分としてはできるだけ忠実に書いてみたつもりであるが、学者として、作家として、また人間としての先生の面影を紹介するものとしては、あまりにも零細な枝葉の断片に過ぎないものである。これについてはひたすらに読者ならびに同門下諸賢の寛容を祈る次第である。

(昭和七年十二月、俳句講座)