輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

ちいさきなにも

小さき花にも

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《小さき花にも(ちいさきなにも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,115 字 · 21 頁

青空文庫

気がついてみると、片手を手塚さんの両手で握られていた。身動きが出来なかった。何かで身体を縛られたようだった。ふいに、手塚さんの汗ばんだような生温い掌を感じて身体の縛めが解けた。私は手を引っこめた。二三歩しざった。

手塚さんは、膝頭に肱をつき、両手を額にあてて、顔を伏せている。

私は階下へおりて行った。口惜しさが胸にこみあげてきた。何か一言、言ってやりたかったのだ。どんな一言か、それは考えても分らないが、どんなことでもいい、言ってやりたかったのだ。なぜ黙っておりて来たのだろう。私はむしゃくしゃした気持ちになった。汚らわしかった。手を洗った。外に出た。

冷やかな外気を深呼吸していると……突然、あれがまた、眼の中に蘇ってきた。

桜の古木がそこにあったのが、いけない。桜の古い幹は、どうしてあんなに醜いのだろう。若木は艶やかだが、古い幹となると、かさかさで節くれだち、垢が鱗のようにつもってるとも言えるし、皮膚病のかさぶただらけとも言えるし、見られたざまではない。散りやすい優しい花がその枝に群れ咲くのが、ふしぎに思える。

裏口の横手のあらい竹垣の外が、建物疎開跡の空地になっていて、その隅っこに、桜の古木がある。