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つきとあざらし
小川未明童話集
小川 未明
線上閱讀小川 未明《小川未明童話集(つきとあざらし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 9,033 字 · 20 頁
子供をなくした親の海豹が、夜も眠らずに、氷山の上で悲みながら吼えているのを月がながめた時、この世の中の、沢山な悲しみに慣れてしまって、さまで感じなかった月も、心からかわいそうだと思いました。
あまりに、あたりの海は暗く、寒く、海豹の心を楽しませる何もなかったからです。
「さびしいか?」と言って、僅かに月は声をかけてやりましたが、海豹は悲しい胸のうちを、空を仰いで訴えたのでした。
しかし、月は自分の力で、それを何うすることもできませんでした。
其の夜から、月はどうかして、このあわれな海豹をなぐさめてやりたいものと思いました。ある夜、月は灰色の海の上を見下ろしながら、あの海豹は、どうしたであろうと思い、空の路を急ぎつつあったのです。やはり風が寒く、雪は低く氷山を掠めて飛んでいました。
果して哀れな海豹は、其の夜も、氷山のいただきにうずくまっていました。
「さびしいか?」と月はやさしくたずねました。
この前よりも、海豹は幾分痩せて見えました。そして、悲しそうに空を仰いで、
「さびしい! まだ、私の子供は分りません。」と言って、月に訴えたのであります。
月は青白い顔で海豹を見ました。