輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

こはるのきつね

小春の狐

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《小春の狐(こはるのきつね)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,102 字 · 27 頁

青空文庫

はかない恋の思出がある。

もう疾に、余所の歴きとした奥方だが、その私より年上の娘さんの頃、秋の山遊びをかねた茸狩に連立った。男、女たちも大勢だった。茸狩に綺羅は要らないが、山深く分入るのではない。重箱を持参で茣蓙に毛氈を敷くのだから、いずれも身ぎれいに装った。中に、襟垢のついた見すぼらしい、母のない児の手を、娘さん――そのひとは、厭わしげもなく、親しく曳いて坂を上ったのである。衣の香に包まれて、藤紫の雲の裡に、何も見えぬ。冷いが、時めくばかり、優しさが頬に触れる袖の上に、月影のような青地の帯の輝くのを見つつ、心も空に山路を辿った。やがて皆、谷々、峰々に散って蕈を求めた。かよわいその人の、一人、毛氈に端坐して、城の見ゆる町を遥に、開いた丘に、少しのぼせて、羽織を脱いで、蒔絵の重に片袖を掛けて、ほっと憩らったのを見て、少年は谷に下りた。が、何を秘そう。その人のいま居る背後に、一本の松は、我がなき母の塚であった。

向った丘に、もみじの中に、昼の月、虚空に澄んで、月天の御堂があった。――幼い私は、人界の茸を忘れて、草がくれに、偏に世にも美しい人の姿を仰いでいた。