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ろうじゅうのめがね

小笠原壱岐守

佐々木 味津三

線上閱讀佐々木 味津三《小笠原壱岐守(ろうじゅうのめがね)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 57,249 字 · 115 頁

青空文庫

酒のしみるのが分らないほど、思いに凝っていらっしゃるなら、ことのついでだ。今からひと押し、押しこんでいったらどうでごわすかよ」

「バカッ」

「違いましたか!」

「…………」

「どうもそのお顔では、ちっときな臭いんですがね。あのときの女の立膝が、ちらついているんじゃごわせんか」

耳にも入れずに、直人は、目をつむっていたが、卒然として身を起すと、にったりとし乍ら、あざけるように言った。

「どうやらおれも、少々タガがゆるんだかな」

「なんのタガです」

「料簡のタガさ。――大村益次郎、きっと死ななかったぞ」

ギクリとなったように、小次郎たちも目を光らした。実はふたりも、それを気づかっていたのである。

「八人狙って八人ともに只の一刀で仕止めたおれじゃ。――のう、そうだろう」

直人の顔が、描き直したように青ざめた。

「しかし、九人目の大村にはふた太刀かかったんだ。そのふた太刀も、急所をはずれて膝へいったんだからな。問題ははずれた最初のあのひと太刀じゃ。八人斬って、八人ともに狂ったことのないおれの一刀斬りが、なぜあのとき空へ流れたか、おまえらはどう思うかよ」

「…………」

「心のしこりというものはそら恐ろしい位だ。