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ろうじゅうのめがね

小笠原壱岐守

佐々木 味津三

線上閱讀佐々木 味津三《小笠原壱岐守(ろうじゅうのめがね)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 57,249 字 · 115 頁

青空文庫

しかし、直人は、うんともすうとも言わなかった。まるで馬鹿になる修業をしてでもいるように、じっと一点を見つめたまま、寝返りも打たなかった。

知らぬまに、高かったその陽がおちたとみえて、うっすらと夕ぐれが這い寄った。――同時のように、ひたひたと足音が近づいた。

小次郎がかえって来たのである。

のぞきこむようにして、その小次郎が手柄顔に言った。

「大丈夫だ、先生。大村は死にますぞ」

「これから死ぬというのか、もう死にかけているというのか」

「急所ははずれたが、思いのほかに傷が深いから、十中八九死ぬだろうというんです。うれしいじゃごわせんか」

「ふん……」

「ふんはないでがしょう。先生は、大村が死にかけておったら、気に入らんですか」

「入らんのう、かりそめにも暗殺の名人と名をとった神代直人じゃ。看板どおり仕止めたというなら自慢になるが、これから死ぬかも知れん位の話で、よろこぶところはなかろう」

「それならば、あのとき黙ってお斬りなすったらようがしたろう。大村が死なんでも、誰が斬ったか分らなんだら、先生の耻にはなりませんからな」

「なんの話じゃ」

「益次郎を斬るとき、神代直人じゃ、と隊長が名乗ったことを申しておるんです。