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ろうじゅうのめがね

小笠原壱岐守

佐々木 味津三

線上閱讀佐々木 味津三《小笠原壱岐守(ろうじゅうのめがね)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 57,249 字 · 115 頁

青空文庫

「てへっ。こういうことになるから、おらが隊長は、気むずかしくて怕いときもあるが、なかなか見すてられんです。――きいたか。丸公。事が騒動になって来たぞ。仰せ畏し御意の変らぬうちじゃ、呼べっ、呼べっ」

「こころえた。いくたり招くんじゃ」

「おれは物されんと仰有るからには、おれたちふたりの分でよかろう。――亭主! 亭主!」

忽ち座が浮き立った。

酒が来る。灯がふえる。

台物が運ばれる。――色までが変ったようにあかるく浮き立ったところへ、白い顔がふたり、音もなくすべりこんだ。

「よう。美形々々」

「名古屋にしてはこれまた相当なもんじゃ」

「あちらのふとんの上に、えんこ遊ばしていらっしゃるのがおらがのお殿様でのう。殿様、病中のつれづれに、妓を呼んで、おまえら、枕元で馬鹿騒ぎせい、との御声がかりじゃ。遠慮はいらんぞ。さあ呑め、さあ唄え」

「…………」

「どうです。先生。景色がよくなりましたな。呑みますぞ」

「うんうん……」

「少しはお気が晴れましたか」

「うんうん……」

「申しわけごわせんな。女、酒、口どき上手、人後におちる隊長じゃごわせんが、その御病体では、身体がききますまいからな。