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ろうじゅうのめがね

小笠原壱岐守

佐々木 味津三

線上閱讀佐々木 味津三《小笠原壱岐守(ろうじゅうのめがね)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 57,249 字 · 115 頁

青空文庫

「仕様のない奴じゃな。折角よろこばそうと思ってつれて来てやったのに、もっとうれしそうに呑んだらどうじゃ」

「…………」

「まずいのかよ。酒が!」

「うまいさ」

「うまければもっとうまそうに呑んだらどうじゃ」

気になったとみえて、新兵衛がたしなめるように横から言った。

しかし、そう言い乍ら新兵衛も、特別うまそうに呑んでいるわけではなかった。なにか心待ちにしていることがあるらしく、何度も何度もそわそわとして、梯子段の方をふりかえった。

それを裏書するように、花簪の小女が、最後の料理を持って来て並べて了うと、ちらりと新兵衛に目交ぜを投げておいて、かくれるように向う端の暗い部屋の中へ這入っていった。

そわそわと待っていたのは、その合図だったとみえて、間もおかずに新兵衛が、あとを追い乍ら這入っていった。――同時になにか悶えるような息遣いがきこえたかと思うと、小女の花簪が、リンリンとかすかに鳴った。

しかし平七は、それすらもまるでよその国の出来ごとのように、ふわりとした顔をして、頬杖をついたまま、あいた片手で銚子を引寄せると、物憂げに盃を運んだ。

「まあ。お可哀そうに。