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しょうせつ えんちょう
小説 圓朝
正岡 容
線上閱讀正岡 容《小説 圓朝(しょうせつ えんちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 163,270 字 · 325 頁
早桶ン中へ入って人間の偉い偉くねえは分るっていうけれど、弟子と師匠の間柄もトコトンのまたトコトンまでいってみて初めていい弟子悪い弟子が定められるんだ。それ迄ゃ何もお前……」
「……ハイ、ハイ、ありがとうごさんす、おかげですっかり……すっかり分りまして……」
並べられているぶつ切りの鮪の皿の中へ顔を突っ込んでしまいそうに圓朝は、丁寧な丁寧なお辞儀をした、そうしていつ迄も上げなかった、きょうはぜひともかえりに初代の、大師匠のお墓へ廻ってこの一切を報告しようとうれしくおもいながら。とたんに、この薄暗いガランとした小大橋の土間の隅々までが、いまにわかに圓朝にはいちどきに何百本もの百目蝋燭を点し立てたかのよう、絢やかなありったけに見えだしてきてならなかった。
……めっきり了見が大きく持てだしてきたのだろう。それから間もなく圓朝は、聞き込んだ二、三の材料を手がかりに今日も名高いあの「怪談牡丹燈籠」を書き上げた。
牛込のほうのある旗本が、昔無礼討にしたものの忰をしらずに下僕に雇い、のちにワザとその者に討たれてやったというそのころあった実話の上には、いまの師匠圓生と自分との上に見る恩愛相克の傷ましさをマザマザと感じさせられ、そこに他人事ならぬ自分の人生というものをみいださずにはいられなかった。