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しょうせつ えんちょう

小説 圓朝

正岡 容

線上閱讀正岡 容《小説 圓朝(しょうせつ えんちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 163,270 字 · 325 頁

青空文庫

真っ暗三宝とはこのことだろう、一寸先は暗というが、どういたしまして前後左右がことごとく暗で、自分自身もまたこの暗といっしょにこのまま溶けてなくなっていってしまいそうでならなかった。

書きものの始末をと嘘をいって上がってきてしまったけれど、じつは女たちの前であまり取り乱している自分を見せたくなく、何よりひとりしばらく心を休めて、自分というものを取り戻したかったからだった。

……落着け落着け。

……落着けったら。

……みっともないぞオイ、圓朝。

……オイ、ほんとうにオイ、しっかりしないか。

烈しく心にこういい聞かせた。ややしばらくしてウムとやっといくらか手応えのある心の声の返事だった。

……明日が分らないって何もお前一人じゃないんだ、この江戸中の人たち皆が分らなくなっているんだ。

……だとしたら落着け、まず落着け、まず落着いてこうしたときにこそ、してこの上の御所存というものをハッキリさせてみるがいい。

……。

なるほどなあ――とややあってさらにまた、心の声の大きく肯いてくるものがあった。だんだん平静を取り戻してきたのだった。闇に闇を見据えていると、犬猫ならでもだんだん周囲の所在が朧に見えてくるようにいま圓朝も心の闇の中に薄々行く手の何ものかの見えだしてくることを感じたのだった。