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しょうしょうしげもとのはは
少将滋幹の母
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《少将滋幹の母(しょうしょうしげもとのはは)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 83,234 字 · 160 頁
「ま、そんなことはどうでもよろしい。それより私が聞きたいのは、世評通りの美人に違いないかどうか、と云うことなんです」
「左様でございます、それはまあ、………」
「それはまあ、どうだと云われる?」
「どう申したらよいのでしょうかな」
と、平中はわざと気を持たせて、ニタ/\笑いを噛み殺しながら、仔細らしく首を傾げた。
こゝで此の二人が噂をしている「帥の大納言」とその北の方と云うのは如何なる人であるか、と云うのに、大納言は藤原国経のことで、閑院左大臣冬嗣の孫に当り、権中納言長良の嫡男である。時平は此の国経の弟、長良の三男に当る基経の子であるから、彼と国経とはまさしく伯父甥の関係になるのであるが、地位から云えば故太政大臣関白基経の長子であり、摂家の正嫡である時平の方が遥かに上で、すでに左大臣の顕職にある年の若い甥は、老いぼれの伯父の大納言を眼下に見下していたのであった。
いったい国経はその頃としては大変長寿を保った人で、延喜八年に八十一歳を以て歿したのであるが、生来一向働きのない、好人物と云うだけの男で、兎も角も従三位大納言の地位にまで昇り得たのは、長生きをしたお蔭であろう。