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しょうしょうしげもとのはは

少将滋幹の母

谷崎 潤一郎

線上閱讀谷崎 潤一郎《少将滋幹の母(しょうしょうしげもとのはは)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 83,234 字 · 160 頁

青空文庫

客人たちの座に着いたのが申の刻を少し過ぎた時分で、宴が開かれると間もなく日が暮れたが、その晩は特に酒杯の進行が激しく、主客共に酔いの循り方が速かであったのは、旨を啣んでいた定国や菅根たちの取持ちのせいもあったであろう。やがて時平が、

「酒ばかりでは面白うない、………」

と、末座の方へこなしたのを合図に、或る少納言が横笛を取り出して吹き始める。それに合わせて誰かゞ琴のことを弾く。扇で拍子を取りながら唱歌をうたう。つゞいて箏のことや、和琴や、琵琶が運び出された。

「御老体々々々、まずあなたからもっとお重ねにならなければ、………」

「御主人公がそう慎しんでおいでになる手はありませんな。それではわれ/\も酒がさめます」

「いや忝い/\、………愚老はたゞもう忝うて/\、………こんな嬉しいことは八十年来始めてゞ、………」

国経が酔い泣きしそうな口調で云うのを、

「あはゝゝゝゝ」

と、時平が持ち前の濶達な笑いで打ち消した。

「そんなことはお置きなされい。それよりもっと浮き/\と騒ごうじゃないですか」

「いかにも/\」

と云って、国経は突然声を張り上げて謡った。

「我に酒を勧む、我辞せず、請ふ君歌へ、歌うて遅きこと莫れ。