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やまだちもんどう
山だち問答
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《山だち問答(やまだちもんどう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 16,163 字 · 32 頁
「……まさに先夜の御仁だな」
「約束をはたしにまいった。御用が済んだから借りた物を返してゆく、取って呉れ」
「なるほど二言なしという言葉どおりか、よろしい脱いでゆけ」
そう云いながらも巨漢はゆだんなくこちらの動作を注視している、玄一郎は無ぞうさに大小をとって渡し、くるくると思い切りよく裸になった。それをひと纏めにするのを待ち兼ねたように、片方から賊の一人が手を出して奪い取った。
「そこでひとつ頼みがある」裸になった玄一郎は下帯を緊め直しながら云った。「……おれは約束だから脱いだが、供の者は気のどくだから、みのがして貰いたい」
「いかんいかん、だいいち主人が裸になったのに下郎が着物を着ていては義理に欠ける、いっしょに裸になれ」
弥九郎も裸になった、主従とも下帯ひとつきりのまったくの素裸である。それで安心したのだろう、暗がりに隠れていた賊たちもぞろぞろとそこへ現われて来た。玄一郎は笑いもせずにかれらを見まわし、「これでいいか」と云った、そして供を促して歩きだした。……巨漢はじっとそのうしろ姿を見送っていた、そして主従が森蔭の暗がりへ入ると、感に堪えたというように低く呻いた。