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ぎゅうじん

山月記・李陵 他九篇

中島 敦

線上閱讀中島 敦《山月記・李陵 他九篇(ぎゅうじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 41,608 字 · 84 頁

青空文庫

但し、この場合もまた、そのいたましさが、純白のドレスに対してやら、それを着けた当人に対してやら、はっきりしなかったのだが。

彼女の盛装姿を見てから二、三日後のこと、私が宿舎の部屋で本を読んでいると、外で、聞いたことのあるような口笛の音がする。窓から覗くと、すぐ傍のバナナ畑の下草をマリヤンが刈取っているのだ。島民女に時々課せられるこの町の勤労奉仕に違いない。マリヤンの外にも、七、八人の島民女が鎌を手にして草の間にかがんでいる。口笛は別に私を呼んだのではないらしい。(マリヤンはH氏の部屋にはいつも行くが、私の部屋は知らないはずである。)マリヤンは私に見られていることも知らずにせっせと刈っている。この間の盛装に比べて今日はまたひどいなりをしている。色の褪せた、野良仕事用のアッパッパに、島民並の跣足である。口笛は、働きながら、時々自分でも気が付かずに吹いているらしい。側の大籠に一杯刈り溜めると、かがめていた腰を伸ばして、此方に顔を向けた。私を認めるとニッと笑ったが、別に話しにも来ない。てれ隠しのようにわざと大きな掛声を「ヨイショ」と掛けて、大籠を頭上に載せ、そのままさよならも言わずに向うへ行ってしまった。