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やぎひげへんしゅうちょう

山羊髯編輯長

夢野 久作

線上閱讀夢野 久作《山羊髯編輯長(やぎひげへんしゅうちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,441 字 · 102 頁

青空文庫

今の腹の音を聞かれたんじゃないかと思って……。

その山羊髯の一寸坊爺(じい)は、身体(からだ)に釣合った蚊の泣くような声を出した。

「お待たせしました。わたし……津守です……」

と云い云い傍(そば)の椅子を指したので、イキナリ腰をかけようとすると忽(たちま)ち引っくり返りそうになったから、慌てて両足を突張った。椅子の足がみんなグラグラになっているのだ。吾輩は下ッ腹を凹(へこ)ましてステッキを突張った。

山羊髯の爺(おやじ)は、その吾輩の真正面に、丸卓子(テーブル)を隔ててチョコナンと尻を卸(おろ)した。向側(むかいがわ)の椅子も相当歪んでいるようであるが、引っくり返らないのは身体(からだ)が軽いせいであろう。その貧弱な事、踏台にハタキを立てかけた位にしか見えない。コンナ奴の下になって働らくのか……オヤオヤと思いながらも吾輩は、絶体絶命の雄弁を揮(ふる)って採用方を願い出た。今までの事を残らずブチ撒(ま)けてしまった。

「……だからモウすっかり屁古垂(へこた)れちゃったんです。編輯の給仕から、速記者から、社会部の外交まで通過して来るうちに、悪い事のアラン限りを遣り尽して来たんです。