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こうじょうさいぼう

工場細胞

小林 多喜二

線上閱讀小林 多喜二《工場細胞(こうじょうさいぼう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 91,234 字 · 184 頁

青空文庫

――二人は道の反対側の暗いところを通りながら、二階をみた。電燈はついていた。別に人影はなかった。下の洋品店に、顔見知りのおかみさんが帳場に坐りながら、表を見ていた。――ひょいと、こっちが分ったらしく、顔が動いたようだった。

と、おかみさんは眼の前の煙でも払うように、手を振った。それは「駄目々々」という合図らしかった。

――変だな。

立ち止っていることが出来ないので、そのまゝ通り過ぎた。少し行って、又同じところを戻った。四囲に注意しなければならなかった。

――ね、君ちゃん、お客さんのふりをして、チリ紙でも買って来てくれ。

――そうね。変んだ。あすこが分ることなんて絶対にない筈だわ。

お君は小走りに明るい洋品店の中に入って行った。森本は少し行った空地の塀で待っていた。――一寸して、お君の店を出てくる姿が見えた。

――どうした?

――大変らしい。

お君は息をきっていた。

――おかみさんが声を出して云えないところを見ると、中に張り込んでいるらしいわ。お釣りを寄こすとき、私を早く出ろ、早く出ろという風に押すのよ。――

悪寒が彼の背筋をザアーッ、と走った。明るかったら、彼の顔は白ちゃけた鈍い土のように変ったのを、お君が見たかも知れなかった。