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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
線上閱讀林 不忘《巷説享保図絵・つづれ烏羽玉(こうせつきょうほうずえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 365,120 字 · 728 頁
「誰かお駕籠を呼んでもらいましょうよ」
拝領町屋
一
お高は、下谷同朋町の拝領町屋にある、おせい様の家へ出かけて行った。それは、店屋にかこまれて、裕福らしい素人家が数軒かたまっている、そのなかのひとつだ。根岸か向島あたりにでもありそうな、寮ふうの構えで、うす陽が塀ごしの松の影を、往来のぬかるみに落としていた。
お高は、鳥居丹波守の上屋敷と上野御家来衆のお長屋のあいだを抜けて、拝領町屋の横町へ出て、雑賀屋のおせい様ときくと、すぐにわかった。細い千本格子をあけると、十六、七の小婢が出てきた。お高は、じぶんの名をいっても、おせい様が知っているわけはないと思ったから、小石川金剛寺坂の若松屋惣七のもとから参りましたとだけいった。
お高の通されたのは、町家によくある、せせこましい中庭に面した、小じんまりした座敷だ。庭のむこうが土蔵の壁になっているので、部屋のなかは、夕方のようにうす暗いのだ。が、贅沢なつくりであることは、つかってある木を一眼見てわかるのだ。床柱など見事なものだと、お高は思った。
お高は、待たされているまに、座敷のなかを見まわして、さびしい気がしてきた。