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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
線上閱讀林 不忘《巷説享保図絵・つづれ烏羽玉(こうせつきょうほうずえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 365,120 字 · 728 頁
その若松屋が、けさは、どういうものか、お高のことが気になってしようがないのだ。
それは、盲目に近い彼にとって、女番頭といえば、大切な人間ではある、ことにお高は、女ではあるが、字も達者だ。それにこのごろは、金稼業のこつもなかなか呑みこんできている。ただ、手紙の代筆をするだけではないのだ。取り引きに関して、なにげなくはさむお高の意見に、ちょいちょい光るものを発見して、じつは若松屋も、内心おどろいているのだ。
それに、いつからか若松屋に許して、女房もおなじになっているお高でもある。若松屋惣七が、このお高がゆうべから顔を見せないことを気にするのに、別に不思議はないのだが、彼は、珍しく、ほんとに何年ぶりかに、女というもののことをこうして、すこしでも切実に考えている自分に皮肉を感じて、いま苦笑をもらしたのだ。それは、霜の朝の池の氷のような、うすい、冷たい苦笑だった。
八端の寝巻きに、小帯を前にむすんだ惣七である。よく見えない眼をこすって、縁の障子をあけた。日光が、待ちかまえていたように、音をたてて飛びこむ。微風が、ねまきの裾をなめた。雑草が、陽に伏している。