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こうせつきょうほうずえ

巷説享保図絵・つづれ烏羽玉

林 不忘

線上閱讀林 不忘《巷説享保図絵・つづれ烏羽玉(こうせつきょうほうずえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 365,120 字 · 728 頁

青空文庫

また、ふたりのあいだへ割り込もうとした。名のみの良人であるばかりか、いまは敵となっている磯屋五兵衛だ。が、この磯五の急場にあたって、お高のこころに残っている愛の破片が、お高をじっとさせておかなかったのだ。お高は、一空和尚の腕をふりほどいた。磯五をかばうように、龍造寺主計の眼下に立った。

龍造寺主計は、はや鯉口を押しひろげて、いまにも右手が、柄へ走りそうに見えるのだ。

「何ごとか存じませんでございますけれど」お高は、うわずった声だ。「ここは、御門内でございますよ。さっき御制札がございましたよねえ。何とございましたかしら。御門内にて、とんぼ獲ることならんぞよ――」

笑おうとした。笑えなかった。お高を見おろしている龍造寺主計の眼が、笑った。

「うむ。なるほど。そこで、この蜻蛉も、ゆるしてやれというのか」

磯五は、土いろの顔をこわばらせて、無言だ。お高は龍造寺主計へ、にっこりした。

「さようでございます。どうか、このとんぼを、逃がしておやりなすってくださいまし」

「とんぼは、面白い。たとえ蜻蛉一ぴきでも、寺内において殺生は遠慮せずばなりますまい。わかった。いずれ機会はある。