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こうせつきょうほうずえ

巷説享保図絵・つづれ烏羽玉

林 不忘

線上閱讀林 不忘《巷説享保図絵・つづれ烏羽玉(こうせつきょうほうずえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 365,120 字 · 728 頁

青空文庫

「はい」

「若松屋惣七どのは、帰られたかな」

「昨晩おそくおかえりになりましてございますが、まだおやすみなされていられますでございます」

「後刻、お眼にかかろう」

「はい」

「大阪のことでござった。声のいい、浄瑠璃語りのおなごがありました。若竹といってな、人はみな、竹女と呼んだ」

「はい」

「若竹という名を、聞いたことがおありかな」

「いいえ」

「江戸までは、届かなんだかもしれん。京大阪では、たいそうな人気であった。何でも、生まれは江戸で、幼少のおりにあちらへまいったとのことであった。江戸の生家は、相当の家であったらしいが、竹女は、何もいわぬから、知れておりませぬ。

とにかく、上方で芸人として名を成した。一時は、大変なものであった。金も作った。が、そこへ男が現われて、竹女はその男へ、身も心も与えたのだ。この男こそ、義理も人情も人のまこともわきまえぬ、けだもののごときやつであった。それがあの磯屋五兵衛である。当時何と名乗っておったか、覚えておらぬが、顔は忘れぬ。あの男です。

あの男が、竹女のあとをつけまわして、金をまき上げた。夫婦約束までして、おんなの心を釣っておいた。