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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
線上閱讀林 不忘《巷説享保図絵・つづれ烏羽玉(こうせつきょうほうずえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 365,120 字 · 728 頁
糸屋のおかみさんは、おおこわいといって、お高を離れて店の奥へもぐりこんで行った。和泉屋では、いま飛びこんだ人たちが戸障子を蹴倒したり、商品をこわしたりする音が、ものすごく聞こえていた。
あとからあとからと押しかける群集で、暗くなりかけた路上は、身動きもならない。八百万の若い者や、角の夜駕籠かきや、町内のばくち打ちなどの威勢のいい連中が、めいめい獲物をふりかざして、和泉屋に頼まれて警戒に来ていた他町の鳶の者と渡り合っていた。
どさっと濁った音をたてて、棒が人の頭上に落ちたり、うす闇黒に鳶ぐちがひらめいたりするたびに、お高は、両手で顔をおおった。それでも、糸屋の軒下に押しつけられて、人の肩ごしにのぞいていた。
とめに出ていた金剛寺の学僧たちや、町内の世話役なども、手の下しようがなくて、怪我をしない用心をしながらただ見物していた。月番家主らしい羽織を着た老人が、縦横に人をわけて走りながら声をからしてどなっていた。
「火の用心だけあ頼むぜ。いいか。火の用心を忘れめえぞ」
誰も、耳をかすものはなかった。
二
混乱の上に、夕風が立った。暴動――それはもう暴動といってよかった――は、拡大する一方である。