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こうせつきょうほうずえ

巷説享保図絵・つづれ烏羽玉

林 不忘

線上閱讀林 不忘《巷説享保図絵・つづれ烏羽玉(こうせつきょうほうずえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 365,120 字 · 728 頁

青空文庫

茶坊主あがりだけに、円頂を隠すためであろう。茶人頭巾のようなものをかぶって、洒落た衣裳を着けている。

長らく大奥につとめたという、その品位はさすがに争えないもので、香をたきしめたように、彼の身辺に漂っているのだが、こうしていると、ちょっと見たところ、磯五という大きな太物屋の旦那とよりは、まず俳諧の宗匠と踏みたいのである。

すらっとして優男で、何よりも、その顔だ。じつに美男で――美男というと、いやにのっぺりしているように聞こえるが、のっぺりしていない美男なのだ。何といったらいいか、――大きな眼が澄んでいて、顔だちがすっきりしていて、官能的な口の両端が皮肉に切れ上がっていて、とにかく妙に女好きのする顔だ。

ほがらかな表情のまま、じっとお高を見ている。

お高は、みじめにあわてていた。手をすべり落ちた茶器が、足もとに散らかって、畳が、うす緑色の液体を吸いこもうとしている。その始末も忘れて、若松屋惣七の顔へ、おののいた眼を凝らした。

惣七は、無言だ。青い色が、顔を走り過ぎた。よく見えない眼をみはって、磯五を見ようとした。細い指が、ふるえて、着物の膝をつかもうとしていた。