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こうせつきょうほうずえ

巷説享保図絵・つづれ烏羽玉

林 不忘

線上閱讀林 不忘《巷説享保図絵・つづれ烏羽玉(こうせつきょうほうずえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 365,120 字 · 728 頁

青空文庫

「放火したものか。それは、わかっておる」

「はあ?」

「放火したものは、死んでおるぞ」

「は」

「法により、その放火した者の家蔵、家財、あきない品、一切没収じゃ」

「――」

享保七年のことで、忠相は、四十六歳になる。四十六歳の忠相は山田奉行として、また普請奉行の一年間、それから江戸南町奉行に任官してこの五年のあいだに、あまりに多くを見、多くを聞いてきている。四十六歳の忠相は、もう一度、あくびをした。あくびの余韻を口の中でころがしているうちに、それが、謡曲とも詩吟ともつかないうなり声になって、忠相は、いつまでもそれをつづけているのだ。

木場の甚は、平伏していた。伊吹大作は、すこしずつ何かがわかりかけてきたように、眼をきらめかせて、横を向いているのだ。

二

政朝に鍾馗を設けて、寃枉の訴えをきくという故事は、王代の昔だ。このデモクラテックな制度が復活して、目安箱という、将軍吉宗の命に出るものだが、忠相の建策だ。この前年、享保六年八月一日から、評定所に目安箱を置くことになった。申告受付け箱だ。これを民間に説明するために、その一月ほどまえの七月六日に、忠相は、日本橋の高札場に高札を立てさせた。