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こうせつきょうほうずえ

巷説享保図絵・つづれ烏羽玉

林 不忘

線上閱讀林 不忘《巷説享保図絵・つづれ烏羽玉(こうせつきょうほうずえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 365,120 字 · 728 頁

青空文庫

だけのことはある。

すばやくはいり込んだ、文次、折よく誰にも見とがめられずに、追われるように表玄関へかかって、土間に立って案内を乞うた。

「お頼み申します――お頼み申します」

しいんとして、人の気配もない。

広い邸内に反響して返って来る自分の声を聞いたとき、何となく文次は、ぶるると身ぶるいを禁じ得なかったが、気を取り直して、もう一度。

「おたのうもう――」

とやろうとすると、

「誰だ」

低い、けれども霜のように冷たい声、それが、意外にもすぐ前でしたから、文次はちょっとどきんとした。声の主は以前からそこにいたものらしい、同時に、黒光りの重い板戸が音もなくあいて、敷居ぎわに、半白の用人が端然と控えている。

いろは屋文次、そもそも何のためにこの家を訪れたか。

それはいわずと知れた今朝がた、津賀閑山に持ち込まれた鎧櫃取りもどしの件である。

閑山の話では五百両の金を入れた鎧櫃を下男久七の間違いから饗庭へ届けてしまった。それを、あとから返してくれと申し入れても、そんな物は頭から受け取った記憶がないという応対。

これだけのことは閑山の口ででもわかっていたが、一応当の久七からじかに聞き取るために、柳原で安兵衛とわかれたのち、文次は連雀町の津賀閑山方へ立ち寄って、そっと裏から久七を呼び出してきいてみると、閑山のいったところとたいして