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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
線上閱讀林 不忘《巷説享保図絵・つづれ烏羽玉(こうせつきょうほうずえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 365,120 字 · 728 頁
うしろで、少女のように邪気のない、おせい様のほがらかな声がしていた。ああいう人をだますなんて、空恐ろしいとは思わないかしらとお高は思った。
お高は一度往来へ出て、そこからそれとなく店をのぞいてみるつもりだった。何だか、わるいことをしているようで、ためらいながら、式部小路の通りまで出た。白く乾いた地面に日光が揺れていた。かた、かた、かたと金具を鳴らして錠剤屋が通り過ぎた。色の黒い錠剤屋が汗ばんだ額を光らせて、ちらとお高を見て通った。すぐあとから、尾を巻いた犬が、土をかいでいった。
日本橋の通りに、大八車がつづいていた。近所に稽古屋があるに相違なかった。女の児の黄いろい声とお師匠さんの枯れた声とが、もつれ合って聞こえてきていた。お高は、そっと店の前へまわろうとした。
磯屋の前は、ちょっとした空地になっていた。小松が二、三本はえていた。これから普請にでも取りかかろうとしているのだろう。まばらな板囲いがまわしてあって、材木などが置いてある。
その囲いのなかの、磯屋の店からはちょうど仮塀のかげになって見えないところに、ちょっと人が動くのが見えた。お高のところからは、横からすかして見るようなぐあいになるので、板がこいの隙間から見えたのである。