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こうせつきょうほうずえ

巷説享保図絵・つづれ烏羽玉

林 不忘

線上閱讀林 不忘《巷説享保図絵・つづれ烏羽玉(こうせつきょうほうずえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 365,120 字 · 728 頁

青空文庫

掛川までは、わたしも、ちと手を伸ばし過ぎたのでしょう。今ごろたたって参った」

「とおっしゃいますと、すこしも引き合わないのでございますか」

「いや、ひき合わぬことは、はじめからわかっておった。宿場の旅籠などという稼業は、俗にも三年宿屋と申してな、はじめてから三年のあいだは、おろした資本がすこしもかえらぬのが、ほんとうだ。その三年のあいだに、ちっとでも利をみようというほうが、むりなのだ。だから、もうけのないことも、当分は金を食う一方であることも、驚かぬぞ」

二

「が、その三年目も、来年である。来年になれば、具足屋もそろそろ上がりがあろうと思っておったにもうおそい。お高、そちは、東兵衛という名を聞いたことがあるか」

お高は、つばをのんで、うなずいた。ぱっちりした眼が、若松屋惣七の額部を凝視していた。眉のあいだの刀痕をめざして、両方から迫りつつある若松屋惣七の眉毛が、だんだん危険なものに見えてきていた。

暗くなりかけていた。お高は、灯がほしいと思ったが、惣七のはなしがつづいているので、お高は、灯を入れに起つひまがなかった。起つ気にも、なれなかった。