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ばくまついしんかいこだん
幕末維新懐古談
高村 光雲
線上閱讀高村 光雲《幕末維新懐古談(ばくまついしんかいこだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,467 字 · 9 頁
手に取って打ち返して見れば、さすがに自分の拵えたもの故、ほんの遊びいたずらとはいいながら、他のあてがわれた仏様よりも愛念の情が自ずと深いわけ。或る日、その出来上がった鼠をば、昼食を終ったわずかの休みの暇に、私かに店頭の棚に乗せて眺めていました。その頃の仏師の店は前にも申した通り、往来に面した店がすなわち仕事場で、今日の仏師の店と大した相違もないような体裁、往来からも一目に店が見えるのでありますから、私は内外に気兼ねをしながら見ていました。
すると、奥の方から師匠の自分を呼ばれる声がする。びっくりして師匠の前へ参ると、
「幸吉、お前、これから直ぐに大伝馬町の勝田さんへ使いに行ってくれ、急ぎの用だから、早く……」
と、いうお言葉。畏まって、直ぐに店を飛び出して行きましたが、その時、急な要事というので、鼠のことを打ち忘れ、そのまま、棚の上に置きっぱなしにして出たのでありました。そうして、師用を済まし、私は午後三時頃てくてく帰って来ました。
ところが、その、私の留守中に、店へ来られたお客があった。その方は上野東叡山派の坊様で、六十位の老僧、駒込世尊院の住職で、また芝の神明さまの別当を兼ねておられ、なかなか地位もある方であったが、この方が毎度師匠の許へ物を頼みに見えられます。