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ばくまついしんかいこだん

幕末維新懐古談

高村 光雲

線上閱讀高村 光雲《幕末維新懐古談(ばくまついしんかいこだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,821 字 · 10 頁

青空文庫

そこでまた言葉を改め、

「後藤貞行という人は右の如き人物。この度私が楠公の馬を彫刻するとなれば、従前の関係上、必ず助力をしてくれることでありますが、しかし、その助力を蔭のものにして、私が表面に立って、美事に馬が出来たとして、後藤氏の力がそれに多分に加わっているにもかかわらず、後藤氏は全く縁の下の力持ちになってしまうわけであります。その事を私は考えますと、どうしても後藤氏の手柄を殺すことは忍び兼ねますので、どうか後藤氏を公に使うようなことに、貴下の御斡旋を願います。これは私の折り入っての御願いであります……」

という意味を私は岡倉先生へ申し述べました。

「いかにも御尤です」

と岡倉さんはいわれ、

「では、早速、その後藤という人を傭いましょう」と快く承諾されたのでありました。私はこの言葉を聞いた時は、まことに延々するほど嬉しく思いました。

岡倉覚三先生という方は、実に物解りの好い方であって、こういう場合、物事の是非の判断が迅く、そして心持よく人の言葉を容れられる所は大人の風がありました。なお、岡倉先生は後藤氏への給料のことなど尋ねられたので、目下、軍馬局で、三十円ほど取ってお出でだから、三十五円位も出せばどうでしょうといいますと、それ位のことなら必ず都合が附きます。