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へいぼん

平凡・私は懐疑派だ

二葉亭 四迷

線上閱讀二葉亭 四迷《平凡・私は懐疑派だ(へいぼん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 81,548 字 · 161 頁

青空文庫

親戚の某が用事が有って上京した序に、私を連れて帰ろうとしたが、私は頑として動かなかった。そこで学資の仕送りは絶えた。

こうなるは最初から知れていながら、私は弱った。仕方がないから、例の某大家に縋って書生に置いて貰おうとすると、先生は相変らずグズリグズリと煮切らなかったが、奥さんが飽迄不承知で、先生を差措いて、御自分の口から断然断られた。私は案外だった。頼めば二つ返事で引受けて呉れるとばかり思っていたから、親戚の者が連れて行こうとした時にも、言わでもの広言迄吐いて拒んだのだが、こう断られて見ると、何だか先生夫婦に欺かれたような気がして、腹が立って耐らなかった。世間の人は皆私の為に生きているような気でいたからだ。

もう斯うなっては、仕方がない、書けても書けんでも、筆で命を繋ぐより外仕方がない。食うと食わぬの境になると、私でも必死になる。必死になって書いて書いて書捲って、その度に、悪感情は抱いていたけれど、仕方がないから、某大家の所へ持って行って、筆を加えて貰った上に、売って迄貰っていた。其が為には都合上門人とも称していた。然うして一二年苦しんでいる中に、どうやら曲りなりにも一本立が出来るようになると、急に此前奥さんに断られた時の無念を想出して、夫からは根岸のお宅へも無沙汰になった。