輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

ひかげのまち

幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選

松本 泰

線上閱讀松本 泰《幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選(ひかげのまち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 52,797 字 · 107 頁

青空文庫

私は家の前に立って高い窓を仰いだ。表道路に面した三階の彼の画室は電灯が点いている。私は開放しになっている玄関をぬけて、案内もなく勝手を知った三階へ上っていった。

部屋には灯火が点いている計りで柏の姿は見えなかった。相変らず部屋は乱雑である。毀れかかった椅子の上に服が脱ぎすててあったり、穢れたシャツやカラーが寝台の下に投込んであったりするのはいつもの通りであるが、部屋の真中に磨上げた靴と、一輪ざしの花瓶がじかにおいてあってカアネーションが挿してあり、そのわきにフライ鍋が投出してあるのが、何だか謎々のようである。私は斯うしたまじめな場合におりながらも微笑を禁じ得なかった。私は余程軽い気持になっていた。これで柏の顔を見て一時間もお饒舌をすれば先夜来の重荷もすっかり軽くなるだろうと思った。

待てども、待てども柏は容易に帰って来ない。恐らく近所のカフェへ珈琲でも飲みにいっているのだろうと思ったけれども、気紛れな柏の事だから、カフェの帰りに何処へ飛んでいったか分らない。私は煙草を三本も四本も飲んでから、待ち倦んで戸外へ出た。

グレー街の家へ帰って、塵挨を被ったような電灯のついている暗い廊下を通って、主人の居間の方へ行こうとすると、階段のところで、バッタリ雇人の婆さんと顔を合わせた。